祖母が作ってくれたハンカチ
ずっと持っている一枚のハンカチがあります。
綺麗なピンクの桜の模様のハンカチです。
この美しい色は祖母がリンゴの木で染めたものです。
10年ほど前に「大切に使ってね」ともらいました。
私はこれをずっとハンカチとして使えませんでした。
飾り棚の上にかけたり、飾ったり。
「綺麗な布」として大切にしていました。
大切に、という言い方は語弊があるかもしれません。
正直どう使ったらいいか分かりませんでした。
ハンカチとしてはサイズが小さめとか、色が可愛らしすぎて自分の好みではないとか表面的な理由は色々あるのですが、「うやうやしく扱わなければならない」ものとして自分の中で鎮座していたのです。
祖母が一生懸命染めてまで作ってくれたものという思いが強すぎて、とてもじゃないけどハンカチとして手を拭いたり洗濯機で洗ったりなんかできないと思っていました。
母代わりだった祖母に対する尊敬や畏怖や反抗心がこのハンカチに詰まっていたのかもしれません。
しかし、汚部屋脱出を目指してさまざまな物と向き合い手放す中で、このハンカチをどうするのか?と自分に問う時がきました。
凄すぎて使えない。
ハンカチとしても使えない。
いっそ捨てようか?
でもそんなことをしたら祖母に申し訳なさすぎる。
そんなことを心の片隅で考えながら立ち止まったままだったのですが、ある日娘が「ママー、それ可愛いね」と言ってくれました。
この自分ではどうしようもできないハンカチを、この際娘に託そうと思いました。
そこで「あげるから自由に使っていいよー」と渡しました。
娘は超ダイナミックでした。
「ドレスにしよう」といってぬいぐるみに巻き付けたり。
「この桜が綺麗だから工作に使っていい?」とハサミでチョキチョキ。お絵描きした紙に桜の花びらとしてペタペタ。
すすす、すごい。
ハンカチとして使わないんだ。
大事に大事にしなくていいんだ。
私がこんなに畏れていたハンカチを、子どもがいとも簡単に天から降ろしてくれました。
少しだけ切られたハンカチを見て、「あぁこれは暮らしの道具として使っていいんだな」とやっと思いました。
まだ娘の大切なぬいぐるみのドレスですが、飽きたら切られた端を縫って今度こそハンカチとして使おうと思います。
そうしたら祖母に「10年かかったけどやっとこのハンカチを使えるようになったよ」と伝えたいです。
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